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大人のWISC-Ⅴ検査であるWAIS-Ⅳ(ウェイス4)検査とはどういった検査で個人の何が分かるのか?
- 2024/09/05

WAIS-IV(ウェクスラー成人知能検査第4版)検査は、成人の知能を評価するために広く使用されている標準化された心理検査です。
WAIS-IV(ウェイス4)検査は、David Wechsler(デビット・ウェクスラー)によって開発され、16歳以上の成人を対象としており、個人の知的機能を総合的に評価するための最も信頼性の高い検査の一つとされています。
この検査は、公認心理師や臨床心理士、精神科医、教育者等が使用しており、個々の知的能力のプロファイルを作成し、その人の強みや弱みを理解するために用いられます。
WAIS-IV(ウェイス4)検査の構成
WAIS-IV(ウェイス4)検査は、以下の4つの主要な指標(インデックス)で構成され、それぞれが異なる側面の認知機能を評価します。
言語理解指標(VCI:Verbal Comprehension Index)
言語的な知識や推論、概念形成、一般的な知識の評価を行います。具体的には、語彙力、類似性の理解、情報処理能力、共通知識を測定します。
知覚推理指標(PRI:Perceptual Reasoning Index)
視覚的・空間的な認識力、非言語的な推論力、視覚的な問題解決能力を測定します。空間認識、空間操作、パターン推理などのタスクを通じて評価します。
ワーキングメモリ指標(WMI:Working Memory Index)
情報の短期記憶、情報保持力、情報処理速度、注意力、集中力の評価を行います。聴覚からの情報を元にタスクをこなします。
処理速度指標(PSI:Processing Speed Index)
視覚的な情報の認識速度、処理速度、注意力を評価します。シンボル検索や記号置換のタスクが使用されます。
各指標は、それぞれ複数の下位検査から構成されており、全体の知能指数(IQ)を計算するためのデータを提供します。
WAIS-IV(ウェイス4)検査でわかること
WAIS-IV(ウェイス4)検査は、大人の知能のさまざまな側面を評価するために設計されています。以下に、具体的にどのようなことが分かるのか、例を挙げて説明します。
1. 総合的な知能レベルの把握
WAIS-IV(ウェイス4)検査は、総合的な知能指数(Full Scale IQ: FSIQ)を提供します。
これは、個人の全般的な知能のレベルを示す指標であり、日常生活での学習能力、問題解決能力、適応能力などを予測する際に役立ちます。
例えば、総合的な知能指数が高い場合、一般的に新しい概念の学習や複雑な問題の解決に優れていることが示唆されます。
2. 認知機能の強みと弱みの特定
WAIS-IV(ウェイス4)検査は、各指標のスコアを通じて、個人の認知機能における強みと弱みを明確にします。
たとえば、言語理解指標(VCI)が高い一方で、処理速度指標(PSI)が低い場合、この個人は言語的なタスクや文章を理解する能力に優れている一方で、情報を迅速に処理する能力に課題があると考えられます。
これにより、個別の学習支援計画や職業上のアドバイスがより効果的に提供されます。
3. 発達障害や精神的な障害の評価
WAIS-IV(ウェイス4)検査は、発達障害や精神的な障害の評価にも使用されます。
たとえば、注意欠如・多動症(ADHD)の成人では、作動記憶指標(WMI)や処理速度指標(PSI)の指標得点が低いことが多く見られます。
この情報は、診断の一助となり、治療計画を立てる際の参考になります。
4. 認知機能の変化のモニタリング
WAIS-IV(ウェイス4)検査は、認知機能の変化をモニタリングするためにも使用されます。
特に、老年期の認知機能の低下や、脳損傷後のリハビリテーションの進行状況を評価する際に有効です。
例えば、ある高齢者が認知機能の低下を訴えた場合、WAIS-IV(ウェイス4)検査を用いて言語理解指標(VCI)や作動記憶指標(WMI)の指標得点を測定し、過去の結果と比較することで、認知症の早期発見や進行度の判断に役立ちます。
5. 職業指導
WAIS-IV(ウェイス4)検査の結果は、職業指導にも役立ちます。
例えば、視覚的な問題解決能力(知覚推理指標: PRI)が高い人は、デザインや工学、建築などの職業に向いている可能性があります。
一方で、言語理解指標(VCI)が高い人は、教育やカウンセリング、執筆など、言語を多用する職業に適性があると判断されることがあります。
6. 精神的健康の評価
WAIS-IV(ウェイス4)検査は、精神的健康の評価にも使用されます。
うつ病や統合失調症などの精神的障害を持つ人々の認知機能を評価することで、その症状の影響を把握し、適切な治療計画を立てるための情報を提供します。
たとえば、統合失調症の患者が言語理解指標(VCI)で低いスコアを示した場合、コミュニケーションスキルの強化が必要と判断されることがあります。
WAIS-Ⅳ(ウェイス4)検査を利用した具体例
例1: 職業適性の判断
30歳の男性が職業適性を見つけるためにWAIS-IV(ウェイス4)検査を受けました。
検査の結果、彼の知覚推理指標(PRI)は高い一方で、処理速度指標(PSI)は平均以下でした。
この結果に基づいて、彼は迅速な情報処理を必要としない職業、例えばアートやデザイン、技術的な詳細作業を行う仕事に適していると判断されました。
逆に、彼が迅速な反応が求められる営業職やカスタマーサポートには向いていないかもしれません。
例2: 認知機能低下の早期発見
68歳の女性が物忘れや注意力の低下を訴えて医師に相談しました。
医師はWAIS-IV(ウェイス4)検査を実施し、ワーキングメモリ指標(WMI)と処理速度指標(PSI)が特に低い指標得点を示したことが分かりました。
この結果を基に、早期の認知症のリスクが示唆され、さらに詳しい検査と早期介入が行われることになりました。
例3: ADHDの診断の補助
25歳の女性が、仕事中の集中力の欠如と忘れっぽさに悩んでいました。
WAIS-IV(ウェイス4)検査を実施した結果、ワーキングメモリ指標(WMI)と処理速度指標(PSI)が低いスコアを示し、注意欠如・多動性障害(ADHD)の診断の一助となりました。
この診断に基づいて、彼女には特定の治療とサポートが提供され、仕事でのパフォーマンスが向上しました。
大人のWISC-Ⅴ検査検査である、WAIS-Ⅳ(ウェイス4)検査で分かることについてのまとめ
WAIS-IV(ウェイス4)検査は、成人の認知機能を包括的に評価するためのツールとして非常に有用です。
この検査を通じて、全体的な知能指数の評価から、個別の認知機能の強みと弱みの特定、発達障害や精神障害の診断、職業適性の判断、さらには認知機能の変化のモニタリングまで、さまざまな情報を得ることができます。
WAIS-Ⅳ(ウェイス4)検査を上手に用いて、役立てていきましょう。
WAIS-Ⅳ(ウェイス4)検査について、詳しく読み解いて欲しい方は、是非、オンライン相談にお申込みください。
発達障害ラボ
車 重徳